【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―

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「失礼致します」


麗宝様の御顔だけで、簡単に通された、明恩宮。


飛び込むように入った部屋の中、雄星様が眠っていると思われる寝台の枕辺にいたのは、順徳太妃―順彩娥(ジュン サイガ)と灯蘭様。


部屋は全体的に窓が開けてあり、空気は澄み渡っていた。


けれども、雄星様の意識は無い。


翠蓮の存在に気づいた蘭太医が、近づいてくる。


そして、説明されることに耳を澄ませながら、


「翠玉様……言われた通りの処方を……」


「ええ、間違ってません。少し、診せてもらいます」


脈をはかる。


(微熱、か……)


秋遠様は同じ毒だろうと推測したけど、これは少し違う。


今までだって、必ずしも、同じ毒はなかった。


(この毒は、幻芳珠ではない)


そもそも、幻芳珠はかなりの希少価値がある。


とある花の花蕊であるのだが、ほんの少しの量で毒にも薬にもなるものだ。


微熱でもあるから、これは、幻芳珠ではない……。


ならば、何故、犯人は雄星様を害した?


殺すつもりがないのなら、毒を盛る必要が無い。


これまで、幻芳珠を盛られてしまったのは、翠蓮が見た限りでは秋遠様だけ。


聞いた話では、殺された妃達もか。


他の薬と服用すれば、気が狂う幻芳珠。


幻芳珠ではないが、その他の毒に侵された者達は多くいて、死んだ者もいた。


では、一体何故、そんなことに―……。


「……蘭太医」


「はい」


「これまで、幻芳珠に限らず、毒に倒れたもの達の記録はありますか」


「記録、ですか……?」


「身分や、どういう経緯で後宮に入ったのかとか……それら全てを、後宮警吏に集めてもらってください」


もし、翠蓮の考えが当たるのなら―……犯人は、間違いなく、あの人たちだ。


姿を見ていないのは、隠すため。