「高星様は……早く、陛下に御子を授かられることを、願っておられるのですね」


残念ながら、その願いを叶えるのは翠蓮ではない、誰か。


すると、高星様は目を丸くして。


「いや?願ってはないぞ?」


と、言ってはいけない一言を。


「え?でも、今……」


「ああ……確かに、兄上の子供は見てみたい。可愛いだろうし、俺は末っ子だから。でもな、今、この危険な後宮では生まれて欲しくないよ。もしかしたら、命を失うかもしれないから」


「……」


「もう少し、場が整ってから……兄上が、不埒者に負けるはずがない。兄上が倒れることはないと、俺は信じてる。だって、兄上は最強だからな!!」


何故か、威張る高星様。


少し幼くて、でも、場は理解しているような、そんな、末っ子皇子様。


生まれてくる子の安全確保が先だと、笑う優しい皇子。


「フフッ、本当に、高星様は陛下のことが好きなのですね」


翠蓮の言葉に、「うん!」と、子供らしく笑う。


「それに、黎祥兄上以外が皇位につくのは……次は、順番的に戻るのなら、流雲兄上だろ?俺、あの人苦手なんだよなー。何考えているか、わからないし」


「……」


高星様の純粋な気持ち。


確かに、流雲様は何を考えているかはわからない。


いっつも、笑ってる。


「でも、軽口を交わす仲であるのでしょう?以前、私の話を高星様から聞いたと……」


「え?」


すると、高星様は首を傾げて。


「何の話?俺、翠玉の話は黎祥兄上にしか―……」


ドクン、と、血が騒ぐ。


「え、それは―……」


どういうことだ?


だって、確かにあの時、流雲様は―……。


「―高星は純粋だね」


少し雲行きの怪しくなった、翠蓮と高星様の間に入ってきたのは、秋遠様。


何かを察してくれたのか、気遣うような表情を向けられて。


「?、どういう意味?秋遠兄上」


高星様は秋遠様の言葉の方が気になってみたいで、またまた、首を傾げる。


「子供っぽいってことかな」


「えっ、俺、まだ、そんなに幼く見える!?」


「フフッ、うん」


仲良さそうに会話をする二人を見て、嫌な感じがふり積もってくる。


―子供らしくあるのはいい事だけれど、この後宮では命取りになることもある。


まぁ、背後に皇太后がいるから、高星様は心配いらない気もするけど。


(武術を得意とされているそうだし)


でも、毒が盛られてしまったら……そうだった。この後宮では、隣にいる人が、明日もそばにいることは無いんだ。