―貴方は、何も変わっていなかった。


こんなに近くに寄るのも、触れるのも、話すのも久々すぎて……とりあえず、妃としての役目を果たそうと思った。


貴方の横顔が、罪悪感に揺れていたから……翠蓮は話をすることを諦めて、次の機会にしようと思った。


―否、翠蓮自身が、普通に皇帝の黎祥と言葉を交わし合う勇気がなかった。


蝋燭が消え、まだ、外の薄暗い五更の初時(午前三時~午前五時)。


重だるい体を無理やり起こして、翠蓮は立ち上がった。


部屋から出て、隣の部屋に。


「―首尾がよろしい様で、お祝い申し上げます」


部屋に入ると、迎えたのは、練若琳。


嵐雪さんに紹介された、密偵なものらしい。


黎祥も信頼している、練家の御息女であり、本来は昭儀の地位にあるとか。


昭儀といえば、九嬪の第一位だ。


低くない地位にいる彼女は、無事、彤史としての役目を果たし、微笑んでいる。


「……妃は、どうするべきなのですか」


「え?」


「目覚めたあとは……」


「陛下がお目覚めになるのを、待てばいいのですわ。本日は、朝議もございません。恐らく、ゆっくりお休みになられることでしょう。話されるのなら、その時間帯に」


翠蓮は後宮での過ごし方、特に、夜伽の仕方は何も習っていなかった。


どうすれば良いのかわからず、彼女がいてくれなければ、本当に戸惑っていたところだ。