「……どちらに転んでも、貴女は寵姫となられる。ううん、今尚、彼の心の中に留まっているのは、貴女でしょう。その時点で、貴女は後宮にいる、どの妃よりも"寵姫”なのです」
怜世さんに断言され、否定しようと思ったが……やめた。
何を言っても、何倍にして返されると思った。
まともに言葉の交わしていない翠蓮と、
言葉をたまに交わしているらしい怜世さんたちでは、
圧倒的に、翠蓮の方が不利だ。
黎祥のことを知らないんだから。
「……蝶雪」
「はい。何でしょうか、李妃」
「貴女はどうして、後宮に入らなかったの?」
聞いてもいい?、そう訊ねると、
「単純に、興味がなかったのです」
と、苦笑しながら、答えられた。
「私は誰かと争いながら、権力を極めるよりも、この生き方が自分に合っていると思ったのですわ。幸い、父は私の意見を尊重してくれる方でしたから、後宮には行きませんでした」
「そう。……天華は?」
「私も似たような理由ですわ、李妃。まぁ、別途で……人に使われるのは良いですが、人を使うのに抵抗感があって。それから逃げたというのもありますけど」
……つまり、この二人は自分の人生の後悔無き方の道を選んだという事だ。

