「?、いいえ?桂鳳は宦官ですよ?」


「……」


思わず、何も言えなくなる。


この美形……いや、宦官に美形は多いけれども。……けれども。


「本当に……?」


疑り深くなってしまう翠蓮を見て、くすくす笑う桂鳳さん。


「ええ。怜世の言う通りですよ。私は宦官です。三年前、死んだ恋人に操を立てるため、男であることを捨てました」


「恋人……」


「私が死んだと勘違いして……婚約者だったんですけどね。今となっては、自殺か他殺かはわかりません。それでも、彼女を愛し抜くと決めています。ですから、男であることを捨てたんです。この簪は、その恋人の形見なんですよ」


宦官は、ものだ。


どれだけ美しかろうと、有能だろうと、宦官は宦官で、一生涯、使われる人生。


それでもいいと思えるほど、その人生でも後悔しないと言えるほど、愛せる人に出会えることは、とても幸せなこと。


けれど、幸せになれるのはほんのひと握り。


「もし、貴方が病気になったら、私が助けます」


「……え?」


「ですから、よろしくお願いします」


誰かを、深く愛すること。


それは、とても素晴らしいことのはずなのに。