「……静かになったね」
「…………流星さんは、彼らが何者か知っていますか?」
翠蓮の問いに、流星さんは笑うだけ。
曖昧で答えが得られない、
誰なのか、
何を考えているのか、わからない父の兄。
「―翠蓮!」
何も言葉を交わさず、ただ、見つめ合っていると、遠くから聞こえてきた声。
「?、兄様が呼んでる」
それに翠蓮が反応すると、
「行ってきなさい」
流星さんは静かに目を伏せて。
「また、会いに来るよ。またね、翠蓮」
と、微笑んだ。
「あの……」
「ん?」
「……っ、いいえ。なんでもありません」
外套を深く被る姿も、何もかも、黎祥を思い起こさせる流星さんは優しく微笑むと、
「翠蓮、家族と仲良くね」
翠蓮の頭を撫でて、そのまま、奥の道に消えていく。
瞬間、頭の中を掠めた記憶。
見たことの無い景色。
誰かの、絶望の声。
翠蓮は撫でられた頭に触れて、ただ、呆然とする。
飛燕達のことや、紫艶さんの言っていたこと、そして、流星さんの本当―……分からないことだらけで、一体、何なんだ。
そして、この記憶は―……誰のもの?

