【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




「何でも、御命令を」


愛してと希う彼らは、翠蓮に愛を求める。


その対価で、翠蓮は彼らを愛す。


「……命令、していいの?」


彼らを使役していると言われても、ピンとはこなかった。


でも、命じていいのなら、言いたいことがある。


「ええ。何でも……っ、」


―飛龍の言葉が切れたのは、翠蓮が抱きついたからだ。


飛龍は驚いたように、


「どうなされました?」


と、翠蓮の身体を支えて。


「っ、死なないで……」


翠蓮は、飛龍にそう訴える。


さっきから、脳裏にちらつくのは、父の変わり果てた姿。


膝を折ると、そのまま、飛龍も地面に座り込んで。


「命じていいのなら、三人ともに命じます。命は大事にしてください。そして、絶対に死なないこと」


「……」


「約束してくれないならっ、流星さんに、あなた達を使役する権利を譲るわ」


少し震える声で、飛龍にしがみつく。


すると、飛龍は口元に笑みを刻み。


「馬鹿じゃの……」


「……うん」


飛燕は翠蓮の頭に触れて、


飛雪は翠蓮の手に自身の手を添えて。


「我らが人ではないこと、とうに知っておろうに」


苦笑されるけど、そんなことは関係ない。


「死ぬほどの怪我なら、その分、痛いはずでしょう。だから、その怪我も許さない」


翠蓮の為に、祥基は怪我をした。


翠蓮の為に、消えない傷を負ったんだ。


父だって、母だって、翠蓮が無力でなかったなら、生きていられたかもしれなかった。


命をかけて、誰かが自分を守ってくれるというのなら、その価値のある自分になろうと、その分、周囲を守ろうと誓ったんだ。