【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




「そっか。でも、君はこれから望まずとも、争いの渦中へと立たされる。それでも負けずに生きて欲しいと、私は願う」


「??はあ……?」


意味がわからない。


争いの渦中って何?


(私は……黎祥に愛されるために、行くんじゃないのに)


訳の分からぬまま、流星さんを見上げていると。


「翠蓮」


飛燕に、名前を呼ばれて。


「紫艶は、その男と契約中みたいじゃ」


飛燕の方を見ると、残念そうに不貞腐れている。


「契約……?」


何だそれは。


身に覚えが―……。


「名前をくれたじゃろ?それが、契約の証」


「……」


知らぬ間に、結んでいたのか。


「名前をくれたから、翠蓮は儂らの主。儂らは全力で、主の翠蓮を守る。代わりに、翠蓮は我らを愛するんじゃ」


愛する……。


「紫艶が自由の身なら、縛りつけようと思ったのに」


飛燕ってば……翠蓮がそんなことを望まないことを知っているのに。


「何でも、命じて。翠蓮のためなら、僕、なんでもする」


「……」


飛雪もそばに来て、そう言ってくる。


「永華珠、いくらでも使ってね。翠蓮の為なら、いくらでも用意するから」


三人が動く理由は、"翠蓮のため”。


「どうして、そんなに……」


「翠蓮が主だから」


「翠蓮が大切だから」


「翠蓮を守りたいから」


驚いて、そんな言葉しか出ない翠蓮を見て、三人は各々に自分の想いを教えてくれた。