【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




すると、


「……嘘でしょ?"還って来た”の!?」


紫艶さんはそう声を上げて、飛燕に詰め寄る。


「還って来たもなにも、"そうじゃから”ここにおるんじゃ」


「あの、筆まめは!?」


「今でも書き続けとる」


「まだ、一人で……?」


「…………約束しとったからの」


「……信じらんない」


何の話か全くわからないけれど、紫艶さん達が飛燕たちと親密な関係なのは理解出来て。


「翠蓮、君は―……」


「流星さん?」


「そうか。やっぱり、君が―……」


その会話を理解したらしい流星さんはその場に傅くと、


「―君に最大の敬意を」


と、この国において、最上礼と呼べるそれをした。


「なっ、何やってるんですか!」


さっきもだけど、どうして、こんなにも彼は翠蓮を敬おうとしてくるのだろう。


「何って……礼?」


「礼?じゃないですよ!私は皇族でもなんでもない、ただの薬師です!そんなことをされる覚えはありませんよ!」


いや、もう少ししたら、妃になるけどさ。


かりそめだけど……確かになるよ?


でも、少なくとも、皇族の年配者と思われる流星さんに敬われる理由なんてない。