「黎祥の隣に、君は相応しい。君は、愛されている。とても、とても……だから、大丈夫だよ」
根拠の無い、励まし。
それなのに、何故か説得力はあって。
「どうして……私と、黎祥のことを……」
「似ているから」
「?」
「君が……かつて、私が愛した人に似ているんだよ。人のためばっかりに頑張って、自分のことを省みらず……私が守れなかった、私の最愛の人。私が弱く、愚かでなかったのなら、彼女は生きていたかもしれないのに。私に愛されたから、彼女は死んでしまった。……黎祥には、私と同じ間違いだけはして欲しくないと思って―……」
「―流星!!あんた、何勝手にいなくなってんのよ!?」
彼が、目を伏せた時である。
上から声がしたと思うと、降ってきたのは見たことの無い、とても体つきの線がいい女性。
ハッキリと言うのなら、豊かな実をお持ちな、衣ははだけた妖艶な美女である。
「紫艶(シエン)……君、どうやって、ここが……」
そんな色香たっぷりの美人を見ても、まゆひとつ動かない流星さんはただ、ただ、ここに紫艶さんがいることに驚いていた。
すると、煙管を取り出した色っぽい紫艶さんは。
「―あのね、あんたと契約関係なんだから、分からないわけないでしょう!」
そう言いながら、火をつけ、煙を吐き出して。
「で?何で、ここに勢揃いなの?変態に、木(モク)と土(ド)まで……」
怒りっぽいのか、鋭い目で飛燕達を捉えて。
身長差で言うのなら、紫艶さんは飛燕の二倍以上の大きさなんだけど、飛燕は飛燕で見上げて、
「……相変わらず、存在が煩いの。金(キン)」
という一言で、張り合う。
妙な緊張感が漂う中、
「今は、金じゃなく、紫艶って名前があるわ」
と、紫艶さんは紫煙を吐き出して、飛燕を見遣る。
「それを言うなら、わしらも同じじゃ。飛燕と飛雪という名がある」
「主は?」
「この娘じゃ」
飛燕に指さされて、一応、軽く会釈する。

