「そんなっ!頭を上げてください!」
「…………嬉しかったんだ」
「え?」
流星さんはゆっくりと頭をあげると、悲しそうに微笑んで。
「君を見て……まるで、白蓮(ビャクレン)が帰ってきたみたいだと……馬鹿だね。死んだ人は、還って来ないのに」
風が吹く。
乱される。
彼の赤い瞳は、初めて会った時の黎祥のように虚ろで、捨てられた子供のような瞳で―……。
「……私は、母に似ていますか?」
「ああ。とても……凄く、似ているよ」
二年前に、死した母。
弱々しく笑い、最期まで、翠蓮の身を案じた。
父が教えてくれた、異国での弔い方で家族を弔って……この家を守り続けてきて、気がつけば、あの革命騒ぎから三年の月日が、黎祥と過ごした日々から、一年が経とうとしていた。
目まぐるしい時の速さに、風化しなかった想いはいつまで残り続けるのだろうか。

