「……黎祥、知ってる?」
横に座った黎祥を見ると、
「…………いや、残念だが、知らないな」
間を置いたあとで、そう言った。
「それより……何の話をしていたんだ?」
話題の転換の早さ。
突っ込もうかと思ったけど、安堵しているおじさん二人を見ていると、口も挟めそうにもなくて。
「皇帝陛下の話だよ」
「皇帝陛下?」
「そうそう。皇帝陛下が病にお倒れになっているって話」
「……そんな噂が立っているのか?」
「うん。真相は分からないけど」
結凛は黎祥に質問されるままに答え、ニッコリと笑う。
「もし、病に倒れているのなら―……この国はどうなるのかねぇ」
はぁ、と、溜息をつきながら、隣のお客さんに串焼き素麺をもってきたおばさん。
「どうなるって……母さん、心配しなくても平気よ。だって、冷酷非道の王様がいるのよ?例え病に倒れてても、負けないわよ。大丈夫、大丈夫」
「しかし、今の王には後継者がいないじゃないか。何せ、後宮には近づかないって噂だ。後継者ができるはずもない。庶民の立場で言わせてもらうのなら、陛下にとっちゃ兄弟の誰かを指名すればいいと思うがね。私は。余計な予算で、この国をこれ以上、傾けないで欲しいよ」
「そこを言うと、後宮が1番の無駄じゃねぇ?」
「俺も、それは思うわ」
「お偉いさん達はいいよなぁ……」
「現皇帝陛下の御兄弟、先王のご子息……本当、この国は終わっちゃうんかねぇ……」
年長者のこの国を憂い、嘆く声に。

