「皇帝陛下、激務で倒れたとか……」


「暗殺されたって話もある」


「って、それは死んでるだろ。病に臥したって、話してんだろうが。俺は妃に溺れてると、考える」


「前王を愚王だと言って革命を起こした人間で、しかも、冷酷非道の名を持つ皇帝が、そんなことするかぁ?大体、現皇帝は後宮に近づかないことで有名だろ〜」


「分からんぞ。後宮の美姫に惚れたかもしれん」


下町のみんなの推測は、自由で。


「―何の話をしているんだ?」


色んな意見が行き交う中で、黎祥が戻ってきた。


そして、近づいた結凛に被っていた外套を手渡す。


「すまなかった、翠蓮。遅くなってしまって」


「ううん。囲まれてたって話を聞いて、心配したんだけど……って、おじさん達、どうしたの?」


ガタガタンッ、と、大きな音を立てて、椅子からひっくり返った趙さんと酒を吹き出した練さんは……。


「翠蓮ちゃん、お前、どこでその人を……」


「裏路地で死にかけてたところを救ったのよ。知り合い?」


「いやっ!いやいやいやいや!そんなはずはない!!」


「知っている人と似ていたからな、少し驚いて……」


全力で否定する限り、怪しいのだが。


無理やり、夢と思い込もうとしているところが尚更、怪しい。