「業波帝の皇后様が、程家出身だったかと」


「凄いですね。そんなことまで知っていましたか」


正しいのか、不安げに口にすると、驚かれる。


「一応、【宵始伝】に目は通しましたから」


「あの、歴史書物を読んだのですか?なるほど。それは少し、過去のことに強いということですね」


「自慢ではないですが……一度見聞きしたものは、基本的に忘れない質でして」


「そうなのですか?素晴らしいですね」


……さっきから褒められてばかりで、どうも落ち着かない。


けれど、怜世様はお世辞でもなく、心から言っているみたいだから……尚更、くすぐったく感じて。


「程家は謀反の罪で一族郎党、処刑されました」


「……存じ上げています」


聞いていて、気持ちのいい話じゃない。


地位を上げることは困難だが、堕ちるのは一瞬。


程家は、その象徴のような家だった。


「驚きますよね。数十年前は栄華を極めていた家も……今や、亡き家です。本当に、上の世界は恐ろしい」


怜世様はその苦しみを知っているかのように、表情を翳らせた。


「左大臣は程家出身でした。また、先々帝や先帝の妃の中にも、程家出身の者はいます。そうですね……飛耀様は存じ上げていますでしょうか?先帝の第二皇子様です」


「知っています。顔を合わせる機会はございませんでしたが、御名前は。お母様は、程妃だと」


「その通りです。先々帝の妃にも、程家のものはいました。最も彼女自身が善人だとしても、家の中の不始末は全員、道連れですので……先々帝、先帝に続いて、程家の娘は皇子を産みました。それで、少し調子に乗っちゃったんでしょうね」


そうだ。


大きな家ほど、人数は多い。


たった一部が犯した罪で、一族全員、命を落とす。


だからこそ、大きな家は恐ろしい。