「…………俺?」


「あっ、めっ、迷惑はでしたら、断ってくださって構いませんので!!」


全力。


すごい速さで後ずさったと思ったら、自分の衣の裾を踏んで、後ろに倒れそうになる。


「危なっ……」


それを支えるために手を伸ばしたものの、距離が少しあったせいで間に合わず、二人揃って座り込む。


「―あああっ!ごめんなさい!!」


勢いよく起き上がって、謝り倒してくる彼女は本当に元皇女様だろうか。


頬に泥をつけて、涙目な彼女の姿が面白くて、祥基は思わず、笑った。


「えぇ……しょ、祥基さん?」


「ハハハッ、ククッ、お姫様らしくないなー」


取り出した手巾で、頬を拭ってやる。


「良いよ。俺でよければ」


立ち上がって、彼女に手を差し伸べる。


「名前を、もう一度教えてくれ」


立ち上がらせて、尋ねると。


「あっ、改めて、淑麟麗と申します。よろしくお願いします!」


全力で、頭を下げてくる。


―また、ひっくり返る気か?


「……っ……皇族ってことを隠したいのなら、名前も変えた方がいいんじゃないか?」


笑いを堪えながら、そう言う。


「あっ、そうですわね。でも、どうすれば……」


祥基の突っ込みに、慌てる麟麗。


見ていて飽きない、元皇女。