【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




「じゃあ、お言葉に甘えます」


「ええ。そうして?」


曲がりなりにも、黎祥の姪っ子だと翠蓮は笑みを漏らして、井戸に向かった。


***


「……ありがとう、お姫様」


「え?」


「酷いことを言ってごめんな。先帝の子女と聞いて、少し試してみたくなったんだ。俺も……翠蓮も、革命の際には苦しんだ民の一人なもんで」


麟麗の横に立った祥基は、前を行く翠蓮の背中を眺めて。


「……仕方ありません。お父様とお母様は、憎まれて当然のことをしたんですから」


「でも、それは親が、だろ?お前は関係ないじゃないか」


「そうですけど……」


「娘であるお前も同じ考えをしているのなら、追い出してやろうと思ったんだよ。でも、違った。だから、ごめん」


祥基が深く頭を下げると、


「やっ、謝らないで下さい!……閉じ込められて、国の状態を知らなかったのも事実ですから」


と、麟麗は慌てる。


「無知は怖いです。これから、いろんなことを学びたい。ご指導を仰いでも、よろしいでしょうか?」


躊躇いげに見上げられて、祥基は目を瞬かせた。