冷宮(レイキュウ)と呼ばれる、妃嬪が罪を犯した時に入ることになる宮に入れられることになっても、それでも、民よりも贅沢な暮らしはできたはずだ。
仮にも、皇后だったのだから。
でも、だから、だからこそ、麟麗様たちを愛さなかった。
愛せなかったのだ。
愛情をつなぎ止められる、皇子じゃなかったから。
―そう、願いたい。
彼女達の母親が、そう非道な人間ではないこと。
愛するが故に、愛せなかったのだと。
「母の気持ちは、分かります。母はただ、父を愛していたのだと。父もまた、臆病者だったのだと。でもだからといって、民を傷つけていいわけじゃない。私は直接、叔父上に会えませんから。だから、翠蓮に託したいの」
ただ、人を愛すこと。
それがどれだけ難しく、尊いことなのか……その意味を、麟麗様は両親のことから学んだ。
「翠蓮、両親の残してくれたものは、自分のために使って。私達と違って、翠蓮は愛されていたんだから。私も、お母様が唯一くれた簪は大事にするわ。でも、残りは私たちが傷つけた、民のために使わせてもらう。……ね?」
長かったが、そうだ。
救済施設の話に戻り、翠蓮は苦笑した。
「そこまで言われちゃ、肯定しないといけないじゃないですか。卑怯ですよ、麟麗様」
「フフッ、だって、翠蓮には沢山お世話になったんだもの。こういう言い回しじゃないと、絶対頷いてくれないでしょう?」
強かになったものだ。
後宮から出て、そう日は経ってないのに。

