【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




そして、程妃―程香雪(テイ コウセツ)は、楚妃が慧央様を産んだ数ヵ月後に、第二皇子の飛耀(ヒヨウ)様を産んでいる。


だから、第一皇子と第二皇子は同い年であり、どちらも、晋熙三年に出生ということになるのだ。


一方で、円皇后は麟麗様を晋熙帝が皇帝になる前に産んでいる。


龍炯帝の前の皇帝、業波帝は艶福家で多くの子供がおり、常に朝廷は荒れ、各地では反乱が起きていた。


言うに、王位継承権争いである。


その中で、末の皇子として生まれた龍炯帝が若くして即位し、ボロボロに疲弊した国を立て直すため、民の心を支えることに情熱を注ぎ、良い政治を敷いたものの、それは晋熙帝に壊された。


理由は、病にある。


龍炯帝が御歳四十五のとき、病に倒れたのだ。


十六という若さで即位してから、常に走り通しだった龍炯帝の御身の限界だった。


そこで、行われた譲位。


その後、黎祥が晋熙帝を討つまでの八年間、この国は暗黒に包まれた。


そんな、三十年間の龍炯帝の治世において、龍炯二十五年に麟麗様は生まれている。


鈴華様は晋熙二年出生だが、それでも、皇子ではなかった。


ある意味、円皇后も怯えていたんだろう。


国民からして、どうしようもない皇帝だった晋熙帝だが、それでも、円皇后にとってはただ一人の愛する人だったんだろう。


権力目当てのようにとられることもあるが、愛した人でないと、最期に自ら首を吊ることはしないだろう。


晋熙帝の死を見届けてから、黎祥に斬られる手段もあったのに……自ら、晋熙帝に貰った、衣装の布で首を吊ったのだ。


窮屈な生活になっても、謀反を犯した者以外は黎祥は罰しなかったんだから。


わざわざ、死ぬ理由がなかった。