「こういうのを、全部売ってお金にしましょう」
しかし……麟麗様の持つ簪の大きさを見るに、その価値同等のものが、袋に沢山詰まっているのか?
それが、五袋も……?
考えるだけで、恐ろしい値段になりそう。
「でも、これ……」
「いいの。私にはもう、要らないものだもの」
麟麗様はそう言うと、表情に翳を落として。
「ずっとね、お父様とお母様が死んだことを、悲しめなかった。悲しんじゃいけないと思ったし、国民が歓声をあげているんだもの。泣くより先に、叔父上に感謝したわ」
先帝によって虐げられたこの国は、未だ、完全に立ち直ることは出来ていない。
先帝が外交政策をしなかったせいで、国境の守りは滅茶苦茶だし、他国が協力して、異民族の侵入を防げているのは、ある意味、奇跡に近い。
「ここに来て、祐鳳様と色んなところを回ってみたの。でも……どの家も苦しんでいた。お金さえあれば、と、嘆く人が沢山いた。その人達に、私の宝飾品を与えてもいいんだろうけど……それじゃあ、何も解決しないわ。腐るほどあっても、いつかは尽きる。それなら、彼らが立ち上がる手助けをしたいと、ここに来て、私は思ったの」
自分の主張をする麟麗様の表情は、迷いがなくて。
きっと、一生懸命に彼女なりに考えたんだろう。

