【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―




「今まで通り、薬草は山から取ってくればいいし、道具は家にあるものを使えばいいでしょう?お金がかかる場合は、お父様とお母様が残してくれたお金があるし」


使い道がなくて、残っている大金。


「だが、それは……母上がお前の花嫁衣裳を、と……」


「んー、今更、結婚するかな?あ、そういえば、結凛が私が結婚する時は相手を見繕ってくれるとか言ってたっけ……」


「後宮に入る時の衣装は?」


「それは、李家が用意してくれるらしいから」


戸惑う慧秀兄様に笑いかけると、祐鳳兄様の提案。


でも、残念ながら、決まっているんだな。これが。


「一応、李家の娘としていくんだから。そりゃ、あちらの意向に従いませんと」


最も、潜入捜査のための入宮なので、特にこだわりはない。


仮でも、黎祥の妻とか、そういうのを気にしない。


「でもなぁ……」


「母上たちは……」


そういうものの、兄たちは納得出来ず。


「人のために使うんだから、お父様もお母様も怒らないと思うわよ?」


「そういうわけじゃないんだよ。なぁ、兄上」


「うーん……」


何を、そんなに悩むことがあるのやら。


慧秀兄様が帰還されるのを待っていると、


「……翠蓮、私もお母様とお父様のお気持ちは大事にした方がいいと思うわ」


と、麟麗様が手を挙げた。