「……お前は、弱いよ」
声を上げてなく勇気のない翠蓮の背中を撫でながら、祥基は独り言のように呟く。
「弱くて、本当は甘えんぼだ」
「……っ、」
「人を見送るの、本当は嫌いだもんな。親父さんのように、帰ってこないかもしれないから」
「……っっ」
「待っているのも、嫌いだよな。兄貴達を、待っていた時を思い出して」
「……うぅっ」
「人が苦しんで、寝込んでいる姿も嫌いだ。平然と看病して、治って、お礼を言われているが……本当は震えて、怖くて、怖くて、堪らない。お前は、人の死が怖いんだ」
―その通りだった。
翠蓮は、怖いのだ。
人の死が。
背筋を伸ばして、前へ進もうとする度に思い出すのは、失ったものたちで。
守りたかったもの、守れなかったもの。
苦しくて、ただ、ただ、苦しくて。
泣くことも出来ずに、何も残ることも無くて。
「……お前が後宮に戻って、黎祥の妃として、人を救うことはいいと思うよ。ただ、自分が弱いことは忘れるな」
―ずっと、強くなりたかった。
強くなれば、全てがどうにかなると。
でも、全然違うよ。
どんなに頑張っても、出来ないものは出来ないんだ。