「一時期、皇帝を辞めることまで考えたよ。そしたら、私が皇帝を辞めたら、死ぬ、と、脅されてしまった」
思い出して、辛い。
先日、順翠玉は病を理由に、宿下がりをした。
何が理由かわからないけれど、栄貴妃―雪麗の所であってからというもの、まともに話すことの無い別れだった。
「…………まぁ、気を落とすな。黎祥」
「手に入らない女性が相手なら、尚更、愛しいという想いを捨ててはなりません。辛くても、それは大事な貴方の一部です。後宮に入れるつもりもないのなら、幸せを祈ればいい」
(幸せを……)
『貴方を愛しているわ、黎祥』
忘れなくていい、だから、祈れ……か。
「そうですね……」
黎祥は静かに目を閉じた。
自分の国の、
この広い空の下にいる、
愛しい人の幸せを祈りながら。