「龍神様が守ってくださっているのなら、腐ってないのでは?腐っていたら、盗むことは不可能だと思いますが」
冷静な秀敬殿の言葉に、我に返り、黎祥は
「そうですね」
と、同調した。
「ま、ないもんを考えても仕方ねぇよな。それより、趙のじじいは?」
「……趙家の何番目の話をしている?前宰相は亡くなったが」
趙家は政治の場において、かなり有能な一家だ。
亡き前宰相も、趙家出身のものだった。
病気になり、若くして世を去ったが。
「趙宰相が亡くなった話は聞いているよ。俺の国でだが、小さな供養はさせてもらった。……惜しい人を亡くしたな」
「ああ」
それもこれも全て、兄のせいだ。
兄の行動が、趙宰相を死に追い込んだ。
「有能な人だった。……先帝の妃に趙家の者はいなかったからな。趙宰相が亡くなってから、趙家は朝廷から退いたと思われたんだが……最近、また、チラホラと趙家のものが官吏になっていて、嬉しく思うよ」
「まともな頭なやつ、分かんねぇもんなー」
同じく国を統するものとして、このふたりは本当に話しやすい。
「……最近、後宮で起こっている事件も解決しようにないんだろう?」
「後宮警吏の目すら、掻い潜るんだぞ?黒幕には、かなりの才能があるらしい」
「…………俺、お前の国の王じゃなくてよかったよ」
安堵の息をつく蒼月。
なんだかんだ言って、こいつも苦労しているのに。

