「にしても、儀式なんて大変やな。黎祥は」
「それをした方が、龍神様の加護を受けられるらしい」
「……そんなん、信じる方やったか?」
「全く」
龍神の存在を否定する気は無いが、自分が欲しいのは人の力であって、人外の力ではない。
「でも、蒼月は信じた方がいいんじゃないですか?」
「俺の国やろ?んー……、本当に、ここの国の龍神の子孫と言われて、納得できるか?」
神陽国―それは、黒宵国の祖とされる女王の傍らに常にいたと言われる、護衛官の身内による建国だと言われている。
何故、龍神とされるのかと言うと、そもそも、龍神の存在が怪しいのだが、その護衛官はこなしたことが、とても人間業ではなかったからだ。
彼一人で大軍を蹴散らしたり、どの伝説を見返しても、人間業とは思えない。
いつしか、その護衛官の存在が疑われるようになっていき、今では一周回って、彼こそが龍神だったのではないかとも言われている。
「納得する、しない以前に、護衛官の姓が劉であったというだけじゃないか。とてもじゃないが、それで子孫と判別するのも……」
「だよなぁ」
それに、その護衛官の子孫が目の前の蒼月であろうとなかろうと、黎祥には関係ないことである。

