「はっきり言うなぁ、黎祥」


「……思い出すだけで、嫌だ」


「まぁ、馬鹿やったしな!」


兄のことを思い出して、大笑いする青年は黎祥と同い年である、隣国の王だ。(これでも)


即位した年齢が十に満たぬ年で、何度も兄と顔を合わせたことがあるらしい。


何故、そんな年齢で即位することになったのかと言うと、彼の父親自体が艶福家であり、黎祥の父など勝てないほどの子女を持っていたらしく。


そこの一番末に生まれた彼―……神陽国王・劉蒼月(リュウ ソウゲツ)は、兄達が愚かな治世を繰り返しては死に、そして、また、(無理やり)自分も王位権力争いに巻き込まれる……という、中々に可哀想な半生を送っている。


「死んだ人を悪く言いたくはないけど、本当、阿呆やった。まるで、兄達を見ている気分になったわ」


彼自身、末っ子である上に、母親は異民族の王女という身分の低い母親の元に生まれた故、王位権力争いから幼い頃は弾かれていたが、ひとり、またひとりと王子王女が死に絶える度、段々、巻き込まれ始めた。


最後の王を倒して、王位についたという点では黎祥と同じである。


最も、十に満たぬ年で前王を殺すなど不可能とされそうだということについては、彼が一重に人を使うのがうまかった故の結果だ。