下町の、牡丹雪の舞う、銀雪の世界で白い息を吐きながら、会話する兄妹の姿。


「―おい、馬鹿妹よ」


「あら、なあに?
ここぞとばかり、兄貴面してくる役立たず」


嫌味たっぷりに振り返ると、二番目の兄である祐鳳は顔を引き攣らせて。


「……お前、母上に似てきたな」


「お母様に?―光栄ね」


「馬鹿言うな。母上はすっごく怖いんだぞ?怒らせると、謝って許して貰うまで大変で……あんな母上を妻にした父上を、俺は未だに尊敬してる」


「ふーん……死ぬ間際まで、兄上のことを心配して泣いていたお母様にその侮辱。是非とも、墓前で報告させて頂かなくてはね」


「ゲッ……」


「お母様、きっと、お兄様を祟るわね〜あー、お母様、可哀想」


最近まで、口にするのが辛かったお母様の話。


お兄様と再会してからというもの、だいぶ、口にするのが楽になった気がする。


「悪い!俺が悪かった!!……にしても、李将軍が協力してくれるとは……」


上手いこと、話を逸らした祐鳳兄上に白い目を向けていると、


「こら、翠蓮。いくら任務といっても、後宮に入るのだったら、もう少し笑顔でいなさい」


と、上の兄の慧秀に窘められた。


「平気よ?だって、後宮に入っても、ずっと顔が見えないように布を被っている予定だもの。まぁ、皇帝陛下には顔を見られるけどね」


腹を括った瞬間、周囲が待ってましたと言わんばかりに動き出し、事が早く進む進む。