「まぁ、お母様があんなふうになってしまわれたのは、私が皇子として生まれなかったせいなのだけど」


自嘲する彩姫様は刀貴人のは馬が合わず、よく、罰を受けさせられていた。


派手に着飾った妹公主の愛媚様とは反対に、いつも、襤褸を纏っていた彼女。


「……そのようなことはありませんよ」


優しく、頭を撫でる。


「フフッ、相変わらず、順大学士は優しいのですね」


すると、彼女は小さく笑う。


「……柳皇太后様は何もなされなかったわ。彩蝶様とお父様が笑い合う時、いつもそばにいて……二人の無茶振りを止めては、怒って……仲の良い姿しか知らない」


「それを、先帝は許さなかったのに?」


母親が好意的なのに、どうして、先帝はあそこまで先々帝を、黎祥様を恨んだのか。


「……先帝と柳皇太后に何の関係があるの?」


「は……」


「お二人に、何か繋がりでもあったかしら?」


けれど、返って来たのは予想はしていたけど、意外な答え。


―それは、決定的な改竄の証拠。


「繋がりは、親子、でしょう?」


「ええ?」


「誰もが、そう申しておりますよ」


冷静に、動揺など計られないように。


すると、彩姫様は。


「……ああ、なるほど。柳皇太后様の、先帝に対する救済をそう受け取ったという事ですね」


ひとつのことに思い当たったのか、ため息。


「救済……?」


「……その真実を知るもの達はみんないなくなっちゃったもの。貴方が知らなくて、当たり前ね」


そして、その事実を知りうるものは皆、死んでしまった。