「そう……内楽堂に行くということは、翠玉の命は脅かされるのね」


嵐雪さんと話したこと、全てを話終えると、嫋やかに栄貴妃は微笑んで。


「元々、呼ばれれば拒絶は出来ませんもの。御召しがあったら、大人しく従うわ。慧秀とのことだって、本当はあってはならぬこと。翠玉は私を生かす道を考えてくれたのでしょう?それで、十分だわ」


覚悟を決めていた。


自分で、これからのことを考えた時に。


でも、憎まれる覚悟をしていても、赦される覚悟はしていなかった。


「……私を、責めないんですか」


「?、どうして?」


「私は……こうして、貴女を裏切るんですよ。兄と幸せになりたいと願う、貴女の心を……一番、酷い形で」


「うん。でも……、翠蓮も辛い思いをしているじゃない」


「私のことはどうでもいいんです。私は―……って、え?」


今、名前呼ばれた……?


思わず凝視すると、ごめんね、と、謝られて。


「ずっと、何かを隠しているんだもの。慧秀に問い詰めたの。そしたら、名前を教えてくれて。でも、それだけじゃ全体が見えなかったから……順大学士に問い詰めちゃった」


「……っ」


そんなこと、嵐雪さんは言ってくれなかったのに。


「……貴女の本名は、李翠蓮。順翠玉なんて存在していなくて、貴女は陛下が愛した、ただ一人の人」


久々に聞いた、自分の本当の名前。


自分と栄貴妃以外の存在しない部屋の中、栄貴妃の言葉に翠蓮は唇を噛み締めた。