「…………後宮で、愛は生きられません」
ぽつり、と、翠蓮が呟くと。
「そうでしょうか?」
順徳太妃は首をかしげて。
「愛しているのなら、中途半端ではなくて、徹底的に愛せばいいのでは?」
「……」
「清潔では生きられないこの後宮は地獄が姿を変え、綺麗に着飾った場所……闘う覚悟があるのなら、ここにいても生きていられます。愛していて生きられないと言われるのは、空閨を囲う夜が続いて、耐えられるかどうかの話ですし」
嵐雪さんは黙っていた。
翠蓮がどんな選択をしても、彼は尊重してくれる。
それが、翠蓮が決めたことなら、と。
「……耐えられる、気がしません」
黎祥が、他の女の人を閨に迎えている夜を、一人で過ごすなんて……考えるだけで、怖い。
逃げられない鳥籠の中に入れられるのに、
愛されなくなっても逃げられない恐怖は……きっと、死ぬよりも怖い。
でも、順徳太妃はあっさりとしていて。

