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「儀式?」


「ええ。代々、陛下が即位される時に行われる、"宵龍儀”と呼ばれるものよ」


栄貴妃の食事の毒味を終えた後、彼女が切り出したのは三ヶ月後の儀式のこと。


「翠玉にも、出てもらうから」


「ええ!?」


「あら、いや?」


「嫌というか……場違いです。それに、多くの患者がいるんです。そのような式典、辞退させていただきますわ」


少しの時間さで、生死が決まる。


そんな人達を置いて、式典になんて出られるものか。


「でも……翠玉、最近頑張っているじゃない。少しは息抜きを……」


「そのような式典の方が、よっぽど疲れます!」


「あら、そう?」


そこまで言うのなら仕方が無いわね、と、渋々、引き下がってくれた栄貴妃は。


「そう言えば、内楽堂の方へ行くんですって?」


と、話題を変えて、また挑んできた。


「はい。灯蘭様に任されましたものの……どなたに、許可を頂いたらいいのでしょうか?」


そこなのだ。


勝手に、後宮内を荒らすわけにもいかない。


だからといって、許可をとる相手も分からない。


「……順内閣大学士に聞いてみたら?」


「嵐雪さんに?」


「彼は皇帝陛下の信頼厚き秘書官だし、皇帝陛下に直接、許可を頂いてくれると思うわ。最も、順徳太妃を母に持っていらっしゃる灯蘭様の命令といえば、簡単に通りそうだけどね」


それでも、念には念である。