「……でも、皇帝陛下を、私は恨んでいないんです。父よりも母よりも、私はこの国を愛しているから」


「だから、ここに隠れ住んでいるのですか?」


「……一人だけ、力を貸してくれる人がいるんです。誰かは言えませんが……彼女のおかげで、私達は命を繋いでる」


―彼女は、大切なのだ。


幼い、弟妹が。


翠蓮が守りきれなかった、小さな頼りげないものたちが。


それを小さな手で、かつての翠蓮と同じ歳で、彼女は守ろうとしている。


守らせてあげたい。


そう願うのは、弟妹を守れなかった後悔のせいか。


小さき生命でも、望まれて生まれてきた訳ではなくとも、この世で一度泣いたのならば、それは生きなければならない理由となる。


生きる権利はあるはずだ。


何も出来なくても、


誰にも愛されなかったとしても。


それでも、生まれてきた人には生きる意味がある。


「……どうせなら、堂々と太陽の下を歩いてやりませんか?」


だから、縮こまらなくていいんだよ。


胸を張って、顔を上げて凛として。