「父も母も子どもに冷たい方でしたし、母に至っては嫉妬深く、敵である女が産んだ双子の面倒を見るはずもない。私と鈴華だって、皇子ではなかった。その時点で、私達は母にとっては邪魔で要らない存在だったのです」


皇帝の愛を、身に留めるためにしろ、死ぬ思いをしてまで産んだ我が子を、そこまで愛せぬものなのか。


そういう人間に限って、自分は一番不幸だと考えるんだ。


そんなことは無いのに。


幸福も不幸も同じくらい、一人の人間に用意されていて、それが違う機会で人の上から訪れるだけのこと。


だから、一番不幸はありえない。


一瞬でも、幸せだと思ったのなら、それは確かに幸せなことなんだから。


「非情でしょうが、父が叔父に討たれた時、母が殉死した時、私はほっとしました。これで、父のせいで責められることはないと、母に怒られることがないと……最も、母は恐らく、叔父に死に追い込まれたんでしょうが」


淡々と、自分の両親について語るその姿は、驚く程に冷静で。


悲しむ暇もなく、全てが変わってしまったんだという、『諦め』の目を見ると、しょうがないことにしても辛く感じた。


わずか十五歳の娘が、こんなにも踏ん張って立っていることを、誰も知らないなんて。


黎祥や、柳皇太后も知らないなんて。