「え、妖々も……?」
翠蓮は戸惑いを隠せない。
だって、飛龍が自分に名前を強請った意味すら、翠蓮には理解出来ていなかったからだ。
「麗々も欲しいって言っておったぞ!変態にやったんだから、良いじゃろ!」
「変態って、伯怜……飛龍のこと?変態かな?」
「変態じゃぞ!目的のために、ずっと突っ走って……ただの変態じゃ」
顔に翳りを落とした妖々。
目的、その真意を知りたくなったけど、聞けなかった。
何故なら聞いてしまったら、変なところにまで首を突っ込んでしまう気がしたから。
「ねぇ、妖々たちはさ……」
「何じゃ?」
「どうして、私に名前を求めるの?」
「……」
「正直、妖々にも御両親がいるでしょう?私なんかが、妖々に名前を与えるのは―……「いないよ」……え?」
風が吹く。
舞い上がる。
風にはためいた妖々の衣は、金色の糸が光って。
見えた妖々の表情は美しく、艶やかだった。
「儂や麗々には親はおらぬ」
「そうなの……?」
「うん。翠蓮と同じ」
見た目は七歳、八歳なのに、その容貌から溢れ出る貫禄さ。
こんな歳で、しっかりしているなんて凄いな……って、尊敬すら覚える。
「じゃあ、飛龍や麗々が家族?」
「ん―……そうかな?」
曖昧な返事。
彼女にはまだ、翠蓮の知りえないことが沢山あるんだろう。
「名前、名前かぁ~」
それにしても、悩む。
妖々も、麗々も、美麗だし……。
悩んでいると、妖々は笑って。
「フフッ、今じゃなくてもいいよ。ただ、考えていて欲しいのじゃ」
と、柔らかな笑顔を見せてくれた。