「湖烏姫……か?」


「けれど、異民族の血を持つものは皇帝にはなれません。異民族の娘が皇后に立てぬことと同じです。それに、何より……柳皇太后は九歳で入宮とありますが、これは異例の話です。成人していない女性が、入宮など……法に触れてます」


嵐雪にそう言われて、確かにそうだと思う。


「……子供は作れる歳だったのか?」


「…………いくらなんでも、それはないです。いや、子供を作れる体だったとしても……幼女に夜伽だなんてこと、父に聞いた限りではなかったですし。兄弟のような日々を送られていたと、聞いていますよ」


「それなら、ますます、先帝の母親は湖烏姫の可能性が大きくなるじゃないか」


「もう、そうなんじゃないですか?先帝は貴方がその手で殺しちゃったし、湖烏姫も貴方が殺しました。もう、今更、関係ないですよ」


面倒くさそうに、嵐雪はため息をつく。


確かに死んだ人のことについて、いくら考えたところで、答えは出ない。


「……でも、湖烏姫の産んだ子が先帝だったなら……私は母子を殺したということになるな」


「今更ですか。他の兄弟にも、同じ措置を施したでは無いですか」


「いや、まぁ、そうなんだが」


またもや、ため息。


相変わらず、手厳しいやつ。