「義母上は、私の記憶が正しければ、父より四つ年下だったはずだが」


「そうですね。生きておられれば、先々帝陛下は御歳五十六歳。つまり、柳皇太后様は、御歳、五十二ということになります」


報告を聞いて、どこでズレたのかを考える。


嵐雪もおかしいことに気づいて、考え込んだ。


「……柳皇太后は、十二で先帝を産んだのか?」


そんなことは、論理的にありえない。


十二で子を産むなんて、聞いたことがない。


「いくらなんでも、それはありえないでしょう」


嵐雪はかなり前から気づいていたのか、冷静で。


「だよな……そもそも、どうして、そういうことになっているのやら」


「柳皇太后と先々帝が細工したのでしょうね。そうでなければ、皇家の歴史書を改竄するなど不可能です」


先帝は革命により倒れた。


よって、必然的に、この朝廷において先帝のことを口にするのは禁忌となる。


だから、誰も気にとめないのだ。


当時、先帝が生まれた時にいた臣下たちは皆、老衰、病死、処刑、殉死と様々な理由で消え、残っていない。


誰も、先帝の母親を追求する方法を知らないから、皆、先帝のことについて話さない、調べない、追求しないことが暗黙の了解となっている。


「柳皇太后は……いつ頃、入宮したんだ?」


「柳皇太后は先々帝とは幼い頃から付き合いがあり、先々帝が皇太子冊立されてすぐ、彼の元へ嫁がれました。冊立当時、先々帝は十三、柳皇太后は九歳です」


「…………えげつないな、柳家……」


九歳の娘を、家のためとはいえ、嫁がせるとは。


「それが、御本人の希望だったとか」


「はぁ?」


理解できない。


「僅か、九歳の娘が望んだ、と?」


「はい。柳皇太后の父君と、私の父は親しくさせていただいていましたので……野心など特にない、とても穏やかな御仁でしたよ。柳皇太后自身も、父君を慕っておりましたし……。まぁ、そこはとりあえずは良いとして。問題は先帝陛下が柳皇太后の息子ではないのなら、誰の息子であるかということです」


その通りだ。


柳皇太后の息子ではないのなら、残るは一人。