「御母堂に楚太昭華を持つ、第四皇女の鏡佳(キョウカ)様は……隠密からの話ですが、嫁ぎたい殿方がいるようですよ。表向きは大人しい長公主として過ごしておられますが、度々、脱走の機会を伺っているとか。因みに、身分はそこまで高くない、武官が相手です」


嵐雪の報告に、黎祥は眉間を揉む。


「……消極的なのも困るが、策士的なのも困るな……。年は幾つだ」


「鏡佳様は御歳、二十二ですね」


「で、第五皇女は処断済みで、第六皇女は灯蘭、か……?」


「そうですね。御母堂は順徳太妃です」


「灯蘭はどんな感じなんだ」


「灯蘭様は御歳十七と、花盛りの年頃です。側近の話では、いつになったら結婚できるのかと騒いでいるようですよ。相手は誰でもいい、政治的利用でも構わないから、早く結婚させろと」


「……何故?」


「飽きたらしいです。長公主としての生活」


サラッと言われたその一言に、


「自由かっ!」


そう、突っ込まずにはいられない。


「まぁ、自由人で有名だった先々帝の御息女で、紛うことなき、貴方様の妹君ですから」


……従姉妹の変わり者っぷりにも、冷静な嵐雪。


「…………嫌味か?」


「幼い頃は幾度、貴方の自由ぶりに悩まされたことでしょうねぇ……」


はぁ、と、ため息をつかれる。


「しょっちゅう、行方不明になって……ハラハラしどうしだったんですからね」


そう言われても。


「だから、灯蘭の自由ぶりは仕方がないと?」


「はい」


……どうやら、そういうことらしい。