「柳皇太后が逃がした先のものが黙っているのなら、知らないだろうな。まぁ、知らなくていいだろうよ。皇帝になったからとて、幸せなわけじゃない」


惚れた女すら、手に入らない。


この座に、どれほどの価値があるのか。


あんなにも玉座を欲しがったくせに、何かから逃れるように酒と女に溺れ続けた兄は、なんて弱かったのか。


「……皇女達も、同じだよな?」


「第一皇女の麗宝(レイホウ)様は、第三皇子と同じく、哀太貴人の御子ですよ。第三皇子とは双子としてお生まれになられ、今年で御歳二十八歳になられますが、未婚です」


「未婚?彼女には婚約者がいたのでは」


「哀太貴人の処刑のとき、破談となったんですよ。御本人は安堵なさってました」


「……そうか」


母親を処刑されたおかげで、助かった姉……複雑である。


第三皇子と双子に生まれ、第三皇子が死んだ……それだけで、姉にとっての母は、環境は、どれほど厳しいものだったことだろう。


「第二皇女様も処刑済み、第三皇女様は彩姫(サイキ)様ですね。御歳二十五になられたかと」


「彩姫か……母親は」


「第五皇女の愛媚様と同じ、刀太貴人です」


「……また見事に、母親がいないのか」


「族滅されてますね。因みに、性格は消極的で、人前が苦手な御方です」


「それは、つまり……」


「嫁がれることは、難しいかと」


「嫁入り先を優遇するではダメなのか……」


本当、癖のある兄弟達である。