「湖烏姫と父に、子供はいなかったよな?」
「いたら、貴方の兄姉君となりますが……第一皇子の先帝陛下は柳皇太后様の御子ですし、第二皇子の流雲様は蘇貴太妃の御子で、貴方が処刑なされた哀太貴人の第三皇子は、生後まもなく亡くなっています。第四皇子の才伯(サイハク)様は、革命直後の謀反で処分なされたでしょう。"貴方が”」
「……才伯はしてないだろう。母親の程太貴人の実家である程家は族滅に追い込んだが」
「表向きには、才伯様は既に存在せぬ皇子ですよ」
「賜死(シシ)をするには、若すぎたからな」
「貴方も十分、お若かったですけどねぇ」
二年前の、革命の際。
多くの家は族滅したが、その光景を見ていた自分の心は驚く程に冷めていた。
母親を湖烏姫に殺されて、湖烏姫を無残にこの手で切り刻んだあの日に、黎祥の心は冷え切ってしまったらしい。
兄の才伯は表向きは死んでしまったが、名前を変えて、今は市井で生きている。
どこで聞き付けたかは知らないが、悩んでいた黎祥に柳皇太后が答えを示したのだ。
個人的に、柳皇太后は才伯に頼み事をしていたようだが、何を頼み事していたのかは定かではなく、彼女が親しくしている李家に、才伯は養子に出された。

