「李慧秀、君も元気そうでなにより。優秀だから、みんな助かっていると話していたよ。今日は弟に会いに来たの?」


「いえ、俺、私は……」


―……きっと、彼はわかってる。


どうして、慧秀兄が宦官の格好をして、碧寿宮にいるのかって理由。


それを追求せずに、弟である祐鳳との面会ということにしてくれる彼は、とても心が広いのだろう。


真実を知れば、栄家が族滅の一途をたどるから。


彼の意思だけで、気分だけで、栄貴妃の行く末が決まる鍵を、今この瞬間、翠蓮達は流雲様に与えてしまった。


彼がどういう人物なのかをわからず、翠蓮はどうしても、彼を疑ってしまう。


だって、黎祥が革命軍の先駆者だったから、彼が先帝を討ったから、黎祥は皇帝陛下になれたようなものなのだ。


年功序列でいくなら、黎祥はかなり下の方だから。


先帝が普通に亡くなっていたのなら、彼は皇帝陛下になるはずだった。


そんな人―第二皇子、淑流雲。


「それにしても……君の噂はよく聞くよ、翠玉」


「え?」


観察していたら、いきなりの話題変換。


自分の方に目を向けられ、翠蓮は戸惑う。


「とても賢くて、優秀で……高星に自慢された。今度、私とも手合わせをしてくれるかい?」


「そんな……っ、恐悦至極の……」


「高星達とはしているんだろう?」


高星様たちには頼まれて、手合わせをしたことはある。


本について話したりとか、政治のことについても。


でもそれは、成人していない皇子が相手だからできたことであって、柳皇太后の次に位の高い蘇貴太妃を母親にもつ、皇帝の兄だなんて……本気でぶつかれるはずがない。


でも、ニッコリとした笑顔にどこかしらの圧力を感じ、翠蓮は断れるはずもなく……。


「お手柔らかに……」


と、呟くのが精一杯で。