「前皇太子殿下や先帝陛下には申し訳ないけれど、私は嫌だったの。救えない命が、溢れる都なんて」


どれだけ手を尽くしても、救えない命があった。


全く、食料がなかったのだ。


だから、流行病にかかってもそれを打破するための栄養が取れなかったり、流行病にかからずとも、栄養不足で餓死していくものが、町に溢れた。


例え、翠蓮が自分の分を誰かに譲ったとしても、救えない命は沢山あったのだ。


それなのに、皇族は贅沢三枚だった。


だから、二年前の皇族による皇族に対する革命は、絶望し切った民に希望の光を照らしたのだった。


苦しんで人が死んでいく姿なんて、二度と見たくない。


二年前の革命、先導者は将軍の李義勇(リ ギユウ)。


素性の知れない現皇帝を祭り上げ、祭り上げられた彼は先代皇帝陛下を打ち倒した。


……と、名が通っているが、それに気づいた李将軍本人はすぐに否定し始めた。


先駆者を務めたのは、自分ではなく、現皇帝であると。


それからというもの、冷酷非道で名が通っている現皇帝も、民の中では英雄扱いである。


どんな大将軍でさえ感心した、その巧みな指揮には誰もが従い、既に国への関心が無くなっていた帝国軍達は皆、革命軍に従った。


文武百官もまた、大抵の者は革命軍に全てを委ね、現実的に孤立した先帝、前皇太子殿下を始めとした悪臣達は皆、革命軍の者の手によって処された。


それから……。


罪人として葬られた、皇族を諌めようとして命を落としたもの達の墓場を変え、正規の墓を用意し、穀物庫を開いて、民への食料の配布。


腐り切った中央政府で逆らうものは容赦なく粛正し、先帝の妃達は手をつけられたものと、つけられていないものに分けられた。