「……どうすることも出来ないと、そう言っているのか」


黎祥の冷たい声が、場に響く。


怯え、震え上がる件太医。


「恐れながら、陛下」


そんな先輩を心配したのか、一人の女性が声を上げた。


凛とした声。


黎祥を恐れることの無い彼女。


「……」


普通、女の太医はいない。


女が働いているということ自体、この国では珍しいからだ。


女は男に守られるべきだという考え方は二年前に廃止したつもりだが……やはり、どこかしらにはその風習は残っており、太医はそう簡単になれるものでは無いので、女性が働くことに関して当たりの強かった頃から、彼女は努力してきたということである。


「……どうした」


その姿は、元気いっぱいに働いていた翠蓮を思い起こし、黎祥が問うと、


「お願いしとう事が、ございます」


恭しく、拝礼した蘭太医。


彼女は澄んだ瞳で、黎祥を見上げた。