『愛してる』


―その言葉は、自分が何度も母親に貰った言葉だった。


『黎祥、愛してるわ』


先々帝の寵愛を一身に受け、黎祥を産んだ母。


元はある民族の出で、皇帝陛下の寵愛は過度に受け取れやしないから、先々帝は母を寵愛するために良家の令嬢にされたのだと、困ったように笑っていた。


世が代わり、父が太上皇となった後、新しく王となった先帝に辺境に追放されてしまったにも関わらず、母はいつも幸せそうに笑っていた。


だから、あんなことになるとは思わなかった。


『ごめんね。愛してるわ、黎祥』


『お前なら出来る!行けっ!黎祥!!』


―あれほどの喪失感は、もう二度と味わいたくはなかったのに。