愛があれば、それで

「結花ー、久しぶりー」



今日は小中高と一緒だった、菜美(なみ)が家に遊びにきてくれた。
結婚してから、菜美と会うのは初めて。



「結構いいところじゃん」


「ありがとう。あたしも気に入ってるんだ」



結婚が決まって、ふたりでいろんなマンションをみた。
5件目くらいにこの部屋に一歩踏み入れた瞬間、あたしと透くんは揃って顔を見合わせたよね。
お互いにここだ!ってピンときたんだからすごい。



「これ?旦那さん」



菜美が棚に飾ってある、ウェディングフォトを指さす。


「うん」


「へー。なかなかカッコイイじゃん」


「ありがとう」



結婚式はしなかったあたしたち。
お腹に新しい命が宿っていたこともあったけど、あたしの結婚はうちの親にいい顔はされなかったから。

あたしの家は代々続いてきた、老舗の旅館で。
ずっとあたしには女将業を継ぐようにうるさく言われてきた。

でも、一般企業に就職したあたしのことをよくは思ってなかった両親。