「嬉しい」



 びっくりして秋くんを見たら、すごく悲しそうな顔をしていた。だから違うなって勘が働く。



「けど、付き合えない」



 ふられちゃった。


 急に気づいた恋心。あっさりふられて、ただ胸が痛いだけ。



「何、真面目に答えてるの」

「え?」

「友達としてだからね」

「……お前、はめやがったな!」

「ふふふ」



 ジョークだよ。全部、全部、嘘。

 わたしはあなたを友達としか思ってない。

 わたしは恋をしたような気がしただけ。

 わたしは……。



「雪乃?」

「そういえば、勉強のこと。どうする? 毎日じゃなくて、週に何回とか決めた方がいいよね」



 誤魔化して貼り付けた笑顔。


 こんなふうにずっと笑っていたから、本当の笑顔がわからなくなった。


 この仮面はどうやったらはずれるんだろう。
 どうしたら笑えるんだろう。



『付き合えない』



 その言葉がわたしを蝕んでいく……。