『君のためを思って言っている』

『全部ぼくが悪いんだな。君はそう思ってる』

『ぼくに味方なんていない』

『雪乃だけはそばにいてくれると思っていた』



 そう言われるたびに、わたしは自分を責めた。


 彼が冷たい目をするから怖くて、謝って、頑張って彼女になろうとして、わたしは壊れていったんだと思う。


 でも冬弥先輩が優しいのは本当だ。



『さっきはごめん』

『ぼくはどうかしていた』

『雪乃を失いたくなかったから』



 そう言って泣くわたしを慰める。
 大きい手は温かくて、すごく冷たかった。


 それが違うんだと気づいたのは夏海のお陰だった。
 当時まだ付き合っていなかった後輩くんに想いを寄せて、幸せそうに悩みを話す夏海が楽しそうで生き生きしていたから。


 付き合っているはずのわたしが切なさを感じているなんて、絶対におかしい。
 比べるものじゃないけど、わたしが幸せを感じたのは告白したあの日だけだった。


 初めて夏海に悩みを打ち明けた。まだ付き合っていることは言っていなくて、遠回しな言い方だったけど。