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『好きなんです。付き合ってください!』



 ただ純粋に告白した。
 冬弥先輩はわたしの憧れで、生徒会長で、何もかもが理想の人だった。


 彼が生徒会長に立候補すると聞いて、わたしも書記に立候補した。もちろん、彼に近づくため。不純な動機だった。


 彼が三年。わたしが二年の春。
 入学式後の仕事が終わって解散となった後。二人きりになったところで、わたしは告白した。



『ぼくが好きなの?』

『一目惚れ、です』



 そう言うと、冬弥先輩はわたしの頭に手を置いた。すごく温かくて優しい手だった。



『……ぼくが先に告白すべきだったね』

『え?』

『雪乃が好きだ』



 最高の瞬間だった。
 想いが通じ合って恋人になる。ずっと夢見ていた瞬間が訪れた。こんなに嬉しいことはない。


 なぜか寂しそうに笑う冬弥先輩が気になったけれど、きっと癖みたいなものだと勝手に思った。多分、わたしは浮かれていたんだ。


 そんなことにさえ気づかないから、不幸になったんだと今ならわかる。
 周りを見なさすぎた。もっと誰かに相談したら、変わっていたかもしれない。