「どういうこと!?」



 叫ぶような声がしてわたしは振り返る。店の外で、男女が言い争っているみたい。


 何か嫌な予感。


 見れば男はスラッとした長身のイケメン。女性は可愛らしいけれど大人しそうな感じ。


 記憶が重なる。
 あの人はわたしじゃないのに、どうしてあの場にいるみたいに感じるんだろう。どうして恐怖に身体が動かなくなっているんだろう。


 痛い。顔が痛い、身体が痛い。


 違う。痛くなんかない。だってあの傷はもう治ったんだから。大丈夫。


 鼓動が速くなる。
 あれ? 呼吸ってどうやってするんだった?


 苦しい。涙が止まらない。



「お前、ウザイんだよ!!」



 男の手が彼女の頬を打った瞬間。
 全てが真っ白になった。