流れる景色はあっという間にわたしの最寄り駅になってしまう。


 もう少し話したかったけれど、仕方ないかな。
 電車の中じゃどうしようもない。いつでも時間通りだもの。



「なあ、雪乃」

「ん?」

「少し、時間あるか?」



 真剣な目で見つめてくるから、ドキリと心臓が跳ねた。
 でもわたしの向こうに違う誰かを見ているって気づいてる。わたしじゃないんだよね。



「うん、あるよ」



 それでもわたしは、あなたの誘いに乗ってしまう。まだ、もっと秋くんと話したいって思ったから。



「じゃあ……」

「秋くん、せっかく社会人になったんだから何か奢ってよ」

「は?」

「最近、気が滅入ってて。ハッピーになれる何か奢って」

「おい、勝手に決めるなよ」



 そう言いながら口角を上げて嬉しそうにしてる。