「ほら、リラックス。深呼吸。」

つないだ手をぶらぶらさせられた。

言うとおりに深呼吸して、目の前の家に入って行く。
玄関のベルを押す手を止めた。

「何?まだ?」

「待って、まだ緊張がとれない。」

「待っててもとれないって。いい?押すよ。」

「まだまだまだ・・・・。」



「大丈夫だよ。」

手を離されて耳元でささやかれて近くにキスされた。

余計なことを・・・・・・。
そんな事で緊張はほぐれないって・・・・。

下を向いた瞬間にピンポーンと家の中で音がして、顔をあげた。
・・・やられた・・・・。

「酷い、わざとだ。」

「よくわかってるだろう?」

「鬼!」

「気遣いのスマートな俺に向かってそんな事言うの?」

「撤回、全力全面撤回。」

そんな事を言ってたらドアが開いて。

「中まで聞こえてるよ。初めまして譲さん。」

目の前にかっこいい男の人が、後ろには知っている美人が。
おおおお~、これはすごい。眩しい。
思わず自分の立場を忘れた。

目の前の視界を手でふさがれた。

「もしかと思うけど、兄貴に見とれてた?譲、それは酷くない?どっちが鬼対応だか。」

そうだった。
いや、でも二人並ぶと、すごくお似合い。

「こんにちは。譲ちゃん。」

当然元、百瀬さんだ。


奥から女性が出てきて。

「何してるの?初めまして、譲さん、さあ、入って入って。」