「ねえ、お兄さんの好きな人はいつもきれいな人?」

「何で気になるの?大体兄貴の彼女は知らないよ。家に連れてきたのも初めてだったし。」

「そうなの?」

「就職決まって、本当に入社ギリギリまで結婚相手が俺の会社の人だって教えなかったくらいだし。」

「ふ~ん、じゃあ、大場は?」

「何が?」

「今までどんな人を好きになってきたの?」

「普通の普通に普通の子。」

「今の普通の三連発、まったくわからない。私も普通なの?」

「まあ、普通の子って一応は紹介する。変わってるとは言わないから、安心しろ。」

変わってる・・・・・普通レベルに変わってるだけだと思う。
変人レベルに変わってる訳じゃない。

「納得いかない顔。」

「いかない、少しもいかない。」

「あんまり深くつき合わないと、たいてい普通の子だよ。もっと深く突き合うと個性が爆発してくるんだろうし。だから他の子と違うところも目につくし、面白くて、かわいいと思うんだし。」

そんな事をさらりと言うけど。

「じゃあ、なんで今までの子は普通の三連発なの?振り返ると、私もそうなるの?」

「昔の話だろう、あの頃は、何ていうか、勢いって感じで一緒にいたりしただけだから。今みたいにお金もないし、バイトばっかで時間もないし、他にも男の付き合いあるし。だから大人の恋愛の方が深く突き合えてると思うよ。個性を目の当たりにするくらいにはな。だいたい、何ヶ月見てたと思うんだよ。ちゃんと付き合う前に、そこそこはバレてたし。」

思いっきり愉快そうな顔をする。

『変わってることはお見通し。』そう言われた気がした。

「変なのなんて、最初から分かってた。まあまあ、想定範囲内、時々突き抜けることもありってところかな?」

そう言われた。

今まで変わってるって言われたことはなかった。
でもあの見つめて黙る癖のせいでわかりずらいとは言われた。
それをポンポンと当てて分かってくれる大場は楽で。
こっそり思ってることも言い当てられる。

私を変ってるっていうなら同じ思考をたどれる大場もそう。
そうだ、大場も変わってる。
よし納得した。


「納得した?他には何か気になる?」

「ない。」

教えてはやらない。
変わり者め。そう思った。

「ねえ、もし普通に卒業して、就職して、私が後輩だったら出会わなかったんだね。」

「そうかもな。でも一回くらいは飲みに行くこともあっただろうから、もっと違う偶然があったかも。会社のガラスに激突して鼻血を出してるところを助けたりなんて。ぼーっとして男子トイレに入ってきて普通に挨拶したりとか。」

「何でそんな変なエピソードを思いつくの?」

「なんとなく想定内のエピソード。今後そんな事があっても驚かない。」

「そこまで変じゃない。」

「まあな、あんまり目立ってほしくはないよ。もしかしたら変わった趣味の男が近寄ってくるかもしれない。大人しくしてる事。」

酷い言い草なのに、うれしさが隠せず笑顔になってしまう自分。
喜ぶところじゃない気がするのに。

元々社外派だって言ってたのを知ってるくせに。
他の人なんて全然眼中にないから。
たまたま一人だけ社内に気になる人がいただけ。
それが大場だったって言うだけ。



すっかり居心地よくなった部屋にもすっかり馴染んでる。


相変わらず地味だけど、みゆきだけはこっそりと綺麗になったって言ってくれた。
自分の努力は平行線だから、ここは大場のお陰なんだろうか。

たくさんの感謝を広い胸に伝えて、目は閉じたまま。
この時間が本当に大切。

ずっとこのまま・・・・・。